下落合教会と私──

 下落合教会とのご縁の始まりは、母からの一葉のはがき。中井に住み始め たとき、近くの教会を調べて知らせてきたんです。そのはがきに導かれて最初 に飛び込んだのが下落合教会でした。強烈な個性を発信している教会に度肝を 抜かれ、そのまま通い始めたので、他に紹介されていた教会については、今や 全く憶えていない有様。
 まず、賛美歌を歌わず座り込んでいる人たちにビックリ。牧師を「あんた」 呼ばわりしたのは、当時の学生運動で権威の否定がテーマになっていたのと規 を一にする行動だったかナ。
 福祉やボランティアは教会の専有的活動かというような内容の議論も、そん な視点で考えたことのなかった私には新鮮でした。
 社会問題に切り込んでいく姿勢も、音楽雑誌の編集を生業としていた私にと って、刺激多く、大いに参考になり、羽仁五郎著「都市の論理」の学習の成果 は三橋一夫さんが「都市の論理とフォークソング」という本にしてくれて実っ たということも。
 クリスマスや日常の賛美歌については、プロの指導があり、オリジナル作品 が演奏され、奏楽もレベルの高いリードオルガン演奏なんですが、遅刻がちの 私としては、しまったと思うことの多い日曜日だったんですねぇ。
 それが、熾烈な議論を経てクリスマス行事の中止、その後も毎年のように議 論に次ぐ議論、そして15年後の復活と、絶えず問い返し、マンネリに陥ること のない教会生活にワクワクしたのもまた事実。
 一方、娘がアトピーだったことで、牧師夫人でもあった丸尾美津穂医師には 大変お世話になり、日曜日に診てくださったことも大変有り難かったんですが、 今思えばわがままな患者でしたね。アトピーがきっかけで食品衛生の分野に踏 み込み、教会を拠点としながらも、独立して消費者運動がはじまり、そのこと が今日も私の人生のテーマになっているんですね。
 わがままといえば、礼拝の後は牧師館に入り浸って、社会の動き、音楽の話、 娘の健康の心配、亭主のグチまで、しゃべりまくってました。牧師夫妻はそん な私をニコニコと受け止めてくださり、豊富な情報と、共感と慰めと励ましを もって対応してくださったのは、これからの私の人生の模範だと思ってます。 最近、よけいなお節介を焼いて親しかった方から絶交されるという体験をした ことから、一心発起してチャイルドラインの「電話の受け手養成講座」に参加 して、「指示・命令・説教」はしないという原則を教わりました。いつもニコ ニコと私のおしゃべりの相手をしてくださった丸尾夫妻を、改めて有り難く思 い出しているというわけです。


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