ジョージ・ブッシュ大統領の武力による報復に反対する

キリスト者政治連盟(キ政連)常任委員会


 9月11日アメリカ合州国で起こった「同時多発テロ」事件について、ジョージ・ブッシュ大統領は、文明と民主主義への挑戦であり、断じて許すべきでないと断言した。5000人を超える被害者を出したというこの事件で、亡くなった人びと、今日にいたっても生死も所在も不明に歎いている人びと、また激しい衝撃を受けて心身ともに傷つけられた家族、近親者を思い、私たちはすべての被害者に癒しと平安が与えられることを願ってやまない。テレビの映像を見せつけられた世界中の人びとにまでも、恐怖と不安を与えたテロリズムは、まさに人類の尊厳を脅かし、世界の平和を脅かすものである。私たちは、このようなことを二度と繰り返すことを許さないことをここに表明する。
 
 ブッシュ大統領は、あえてテロリズムの首謀者および実行者に対して「報復」することを宣言している。私たちは、もちろんテロリズムは断じて容認するものではない。しかしながら、軍事的にこれを絶滅することを考えることに私たちは賛成できない。そもそも、憎悪に基づく「報復」によって問題が解決するものとは到底考えられない。「報復」が相手方の憎悪を招き、憎悪はさらなる「報復」となって、その悪循環は収束するところを知らないであろう。憎悪の思いはこのようにして、人間の荒廃を招くばかりであり自然環境の破壊もその限度を超えてしまうであろう。それこそ、文明の破壊であり、人間の尊厳への冒涜ですらある。ここに、アメリカ合州国政府が選んだ軍事的制裁の方針は速やかに撤回すべきである。
 
 さて、ブッシュ大統領のテレビ演説(9月12日)の最後に神の祝福と加護を祈るという意味の発言をした。しかし、「報復」とキリスト教とは全く相容れないものであることを注意したい。新約聖書マタイによる福音書の「敵を愛しなさい」(5:44)というイエスの言葉、あるいはローマの信徒への手紙の「復讐するな](12:19)]と教えたパウロの手紙などは、キリスト者ならば誰でも知っている。人類の叡知は、テロリズムに勝る力があることを私たちは憶えておきたい。
 
 私たちはジョージ・ブッシュ大統領に軍事的な「報復」をやめるように警告したい。そして、とりあえず国際機関によって事実を解明することを勧告する。歴史の批判に耐えるだけの客観的かつ公正な審理を尽くすべきである。さらに、テロリズムを根絶するには、軍事力を用いるのでなく、パレスチナ和平を進め、テロリズムを誘う貧困など――それはそもそも、国際的な不正ですらある――をなくする国際的な活動を始めるべきである。
 
 日本の小泉純一郎首相は、ブッシュ大統領の「報復」を支持する方針を決定した。それは、日本を含むアジアの諸地域の住民にとっても恐怖と不安を招くものである。沖縄はじめいたるところにアメリカ軍の基地がある日本が真先に相手方の「報復」の標的にされてしまうであろう。小泉首相は、「憲法の許す範囲内で」と限定をつけながら、アメリカ合州国の軍事行動に協力を約した。日本国憲法は、日本だけの安全と平和を保証するだけのものではない。まだ、「非武装平和」の原則を知らないアメリカ合州国など、いわゆる先進諸国もこの平和条項は耳を傾けてしかるべき「福音」なのである。私たちは「武力による威嚇」および「武力の行使」に頼ることなく、平和的な解決を求めることを勧告しようではないか。東洋の賢者が、「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」と教えている。重ねて小泉純一郎首相も「憲法尊重擁護の義務」に基づいて英断をもって軍事的報復への協力を撤回すべきである。
 
 私たちはすでに始まっている21世紀を、「戦争とテロリズム」でなく「和解と平和」の時代とするように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」(日本国憲法前文)イニシアティヴを執るという「名誉ある地位を占め」(同)る光栄を担おうではないか。  

2001年 9月21日